結べぬ組み紐屋

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結びの意味、文化性を解さぬ組み紐屋が、
目先の利益を得るために孫子の飯の種を食いつぶす形で
日本人の結び、美意識を鈍麻、損ねの愚。
金具(カン)付けの羽織紐、大きなぼんぼり房、三分紐等の他、
上の結びもその典型で。

なにのための紐なのか。
羽織の脱ぎ着、結び解きの所作に繋がらない引っ掛け専用結び。
パッと見、変わってる、珍しいというのがお洒落というものではない。
箸を一本ずつ右手左手に持って食べるのが新鮮!工夫!
などならないのと同じく。
合理、論理に基づく用の美、踏まえあってこそ。

この結びのナンセンスさを解さず、さもお洒落なもの、
特別なもののように並べ売る売り屋も同じく。
日本人の結び、美意識を損ね、結果組み紐が売れないような
状況をつくってきた張本人で。

これは、組み紐に限らず、織の世界も同様で。
帯を結べぬ織屋による結びのスポイル。
機能性の低い織にも繋がり。
角帯とは言えぬ帯の氾濫、和装レベルの低下にも繋がり。

今あらためて、結びの装飾性・文化性、結び所作の
芸術性・奏で性を取り戻していくこと、実践・提示していくこと
が重要に思い。

 

角帯の形状分類

1 袋織
表経糸(おもてたていと)・裏経糸を上下二重に張り揃え、そこに緯糸(よこいと)を連続的に通していくことで帯の上下に縫い目がなく袋状に織り上がる。上下を自由に選べる。
博多織などは廉価品でもこの織り方。一部高級品で2の倍幅織がある。

2 倍幅織
2倍の幅(19~21cm程)で織り、縦半分に折った帯。
(折り山:輪の方が下になる。下腹をホールドする意味、張力を支えられるように。)
両端の一部(手の部分40cm程)のみ縫い/端から端まで縫い等。
手かがり縫い/かがりミシン縫い/叩きミシン縫い等。
平織等の場合は袋織よりも簡易に織れ、袋織の仕掛けが出来ない織屋や廉価品に用いられることもあり。
必ずしも端から端まで縫い留める必要はなし。
安易な織屋は平気でミシンで叩く。(博多では見られないものの米沢ではあり注意)
※一方で、織味・締め味を求めた凝った織り方、多重織などの場合、袋織に出来なかったり、袋織にすると仕掛けが高度になり極度に価格が上がるなどから倍幅織で織る場合もあり、こうした方向の品は、味が良く高級品となる。(博多でも、米沢でも)
高級品を謳った高額品でも、必ずしも織、味が良い帯とは限らず、程度の低い帯もあり、安易にパターン化して分類捉えするのではなく吟味が必要。

3 仕立て帯・くけ帯  本来は角帯とは言えず
4m×20cm程の布(この場合縫い目は一方:上)、あるいは4m×10cm程の布2枚(この場合縫い目は上下双方)を裏返し芯を入れたりして縫い表裏逆にし整え等。(太くて長いハチマキの作り方的)
誂え帯などと売られているが、本来の角帯としての締め心地は得られない。
男帯と女帯とでは意味合いが異なり。男帯は実質帯、女帯(お太鼓帯)は飾り帯。
(女帯でも半幅帯は男帯的な面。またお太鼓帯でも芯なしかがり前提の八寸帯は男帯に近い織のものあり。)

織、布に求められる「機能性要件」という意味で言うと、角帯が一番要求が高度で、他の品・織・布を角帯に代用することは困難。
角帯専用に織られたものでないと角帯とはならない。
実際は、角帯用に織られた絹の帯・織でさえ、本当の意味で良い角帯と認知されるような帯・織は難しく、非常に高度な競争・創造・蓄積がなされてきた分野となる。
(長着や羽織は、まだ布としての代用が効きやすい。洋服地を長着、羽織になど。
袴も代用は難しく、今現在袴に用いられているものでも本来は袴地としては相応しくないものも多々。
ただ、ものによっては袴に適するような布もあり、角帯よりは代替が得られる面あり。)

以上の明記無ききもの販売は文化を損ねるもので、本来の角帯の意味、用途、高度な用いられ方、結ばれ方、締められ方、その際の高度な心地、官能感を台無しにするもの、日本人の和装感覚を鈍感にさせるものとなる。
売り方と共に、選び方、買い方の問題ともなり。
相乗か、相殺:レベル低下の悪循環か。

この他、柄の付け方、デザイン面の問題もあり。
これはまた別の機会に。

袴を着けて芸道をする意味は

基本と応用、基本が大切。
和の食:箸使い、和の衣:帯紐結び。
こうした衣食住の基本を踏まえずに、和とはなにかを考えぬままの武道、伝統芸能等の芸道では深い求道は困難。

袴は和の衣の基本にあらず、応用であり。
基本は長着+帯。
長着においても丹前・浴衣、そして角帯・兵児帯以前に細紐2巻き。
この基本初歩を通じて、和の衣:和装と洋装との相違を知ることが出来る。
そうした学び方こそが重要。

モノはシンプル。棒二本の箸にしても、帯紐にしても。
(帯紐に関しては、織り・組みの基本踏まえはありつつも、高価でなければならないというものではなく)
誰でも持てるようなシンプルな道具を用い、人にスキルを求めることにより皆が文化的に暮らしていくことが可能、国民総体の豊かさを高めていく方向性、メソッド。

衣食住の基本を、合理を踏まえて学び体得してこそ、応用、“道”が可能となる。
和装、きものは結んで着る服。
帯紐結び、合理結び、折り紙的幾何結びを解さずして、応用たる袴着けは出来ず。
芸道コスプレ、作業着的な着方となる。
それは、高段位者でも、称号者でも、連盟役員等でも同様。

今あらためて、基本からの見詰め直し、和の基本を踏まえた身繕い、求道が重要に思い。

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「着奏」 結び・着装の奏で感・芸術性 

文化・伝統の基本は衣食住、日々の実生活を通じた文化伝承こそ。
箸使いに象徴される様に、芸道以前の基礎・根本となる。
和の衣:和装:きもの。
洋装と和装の相違はいかに。
・洋装は服に求める:曲線裁断・立体縫製
・和装は人に求める:直線裁断・直線縫い(基本)
きものは結んで着る服。
結びの知性・装飾性・芸術性・エレガンス・文化性こそ。
織+仕立て+結び=三位一体の高度な統合により成立する。
こうした和文化・和の心は、時を越え地域を越え普遍性を持つ。

モノはシンプルに、人にスキルを求める文化、価値観。
(日本人のほとんどが箸を綺麗に持てるという豊かさ、幸福の方向性。
これは大いなるヒントとなる。)
これにより、他者を追い落とさなくても、ことさらに差別化しようとしなくても、個としても社会全体としても豊かさ、文化性を感じつつ、みながそれぞれ幸福に暮らすことが出来る。
一部の特権階級のみならず、国民総体の豊かさレベルの向上こそが社会的リーダー、真のエリートの役割、矜持。
愛、和、優しさと正義。
和の政治、仁政は、日本の建て直しにおいて重要な鍵となるだけでなく、世界平和、文明史ステージUPにも繋がっていく。

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結んで着る服きもの。
結びの合理、知性、エレガンス、芸術性、文化性。
理に適った結び、着装の所作は、それ自体で美しい奏で(かなで)、演奏、芸術となる。
着奏(ちゃくそう)、着奏で(きかなで)、結び奏で(むすびかなで)。
着装、結び途中の所作も、結び上がり、着上がりも。
そうした意味での「着奏家」。日本人なら、誰でもなり得る。

織+仕立て+着装・結び=三位一体の高度な統合。
このバランスにより破綻なく装いを成り立たせるのが和装。
精度高く、非常に心地好く(官能的に)装える。
そうした先人の蓄積、文化。

結べない者は、その模索、探究、伝統の意味を解せない。
色柄模様絵で着ることが出来ているつもりの和装となる。
・アイテムを足せばお洒落
・キラキラ・ふわふわをつければお洒落
・裏を見せればお洒落 等々
そうしたコーデ、工夫、自由、センス、個性。
プロ、作り手、売りて手、仕立て手、コーディネイター、編集者等でも同じく。
あらためて、結べるきもの、織・心地を解するきものこそ。

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